Lさんが突然
「父ちゃん、百人一首やろう」
って言ってきたんです。学校で百人一首の勉強を
してきたみたいなんですね。近々大会があるとかで。
広瀬すずちゃんが出ていた「ちはやふる」っていう映画を
テレビで見た影響もあるみたいなんですけど。
で、読み手をやれって言うんですけど、二人でやって
片方が読んだら相手がいないじゃないですか。
父「ネットで読み上げてくれるのがあるよ」
って言ったんですけど、肝心のカードが見当たらないと。
仕方ないので百人一首の話しをしていたんですね。
父「百人一首ってさぁ、凄いよねぇ」
L「何が?」
父「だってさ、決められた文字数の中に色んな表現を
埋め込んでるでしょ。」
L「そうなんだぁ。」
なんて会話をして。女子中学生だから恋の歌が響くかなぁ
なんて思って、崇徳院の歌を教えたんですね。
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
川の流れが早くて、岩の所で二つに分かれるけれど
そのあとまた一つの流れに戻っている。
今は離れているあの人と私もいつか一緒になれると思う。
みたいな内容だと思うんだよねぇ。川の流れを見ながら
そんな歌を作れるって凄いよねぇ、って話したんです。
そしたらね、色んな歌を調べていて
L「あ、父ちゃんの歌があるよ」
って。
うかりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
父「あー、うっかりハゲね」
L「うっかりハゲちゃった、山おろしが強くって、って事?」
父「違います。頭見て言わないで下さい。上の句が『うか』で
始まったら『ハゲ』しかないので簡単に取れる、って覚え方です」
この句は結構面白くて。
初瀬の観音さまぁ、「あの人が山おろしみたいにアタシに冷たく
なりますよーに」なんてお祈りしてないのに、ヒドイわ。
みたいな感じですよね。山おろしくらいの冷たさって感じる感性が
素敵ですよね。しかも男性が作った句っていうのが良いですよね。
短歌ってかけ言葉を入れたり、ミクロからマクロへの視点の移動
だったり。言葉で世界を捉えるって本当にスゴイ事だと思います。
で、カードが見つかって L と R で源平合戦をやったんですけど、
二人とも句自体を全然覚えてないので一向に取れないという。
そのうち、ぶつかって喧嘩別れして
R「もう L とは百人一首やらない!」
ってなっちゃって。結局最後までは出来ませんでした。
動画で育った L と R は文字から想像する自分なりの世界観、
みたいなものを作る機会が少ないんだろうなぁって。
自分が見た景色、感じた気持ちみたいな一瞬の出来事を
切り取って言葉にする。とっても素敵なのでぜひチャレンジ
して欲しいと思っています。
で、二人に今の気持ちを歌にしてもらいました。
Rさんの句 卓球をやりたい日曜日に歌いました
父ちゃんの 健康維持を 保つため アタシと一緒に 卓球しましょう
Lさんの句 別れた彼氏を歌にしました
許さねぇ 二股賭けた クズ野郎 愛とお金を 返してくれよ
色々言いたいことはありますが、作ってくれたことに
感謝しておきます。
短歌の素晴らしさは二人には伝わらなかったみたいだけど、
うっかりハゲだけは覚えられたみたいだから今日も笑って
おこうっと。
コメント